2020/07/12 12:00



家で過ごす時間が増えたこと、家での食事の回数が増えたことで、
お盆やトレーを活用する方が増えています。


お盆を選ぶときに、迷うのはサイズ、寸法だと思います。
温故知新。「故(ふる)きを温(たず)ねて新しきを知る」で紐解いてみましょう。

箱膳、会席膳、丸盆、長手盆、お茶道具の一文字盆も、
昔のものは揃ってほぼ鯨尺(くじらしゃく)で一尺。
鯨尺は裁縫などに使う竹製のものさし。女性の腰幅。
(明治に鯨尺は25/66mと決められ、それに照らし合わせると約37.9センチということになります)

曲尺(かねじゃく)で測ると一尺二寸。(約36センチ)
ん?どういうこと?計算が合わない。

曲尺は大工さんが木工に使う金属製のL字型に曲がったものさし。
どちらも身度尺(しんどしゃく)といって
体をモノサシの単位にした古いモノサシ。
工業デザイナーの秋岡芳夫さんの本ではこんな考察があります。


「たとえば布を織るのに、経糸(たていと)を織り手の幅ぶん張ってから織りはじめると、
緯糸(よこいと)を通す作業が大変楽になります。
幅の広い布ですと緯糸を通す杼(ひ)の操作が大変ですが、
腰幅の布でしたらごく自然に左右の手を前方に伸ばした格好で杼を操れますから、疲れません。
同じ視点で考えてみますと、(中略)食事を運ぶお盆が腰幅のお盆だったら、
すっと伸ばした手で肩幅の中で持てますから、持ちやすく、運びやすく、狭い廊下などの行き交いにも不都合がありません。
お盆やお膳に、女のモノサシ(鯨尺)で測ってほぼ一尺幅のものが多いのは、
女たちが持ちやすくて運びやすいようにお盆、お膳を、女のモノサシで測って選んだからだろうと思います。
曲尺で測ると一尺二寸ぴったりなのは、お盆やお膳を作ったのが男たちで、曲尺で測って作ったからでしょう。」
(秋岡芳夫著 株式会社TBSブリタニカ出版より引用)

要約すると
お盆はだいたい36センチが多かったと。
そこに4寸のお皿(約12センチ)と汁椀、めし碗、小皿、湯呑などを並べます。
汁椀の径の決まり寸法は直径114~120㍉で、この決まり寸法は徳川末期から守られています。
径120㍉の汁椀は男の手に全くしっくりきます。横持ちにした親指と中指が椀の口径のちょうど半ばに達します。
それよりちょっと小ぶりな径114㍉のお椀は女サイズのお椀で、女の手に手頃です。
胴回りの半分以上に指がかかり、しっかりと持つ必要のあるもの例えばビールびんの直径は二寸五分(約7センチ5ミリ)。
幕末期の三号徳利や、湯呑み茶碗と同寸。
そういった和食器の寸法がしっくり納まる絶妙な寸法が36センチだったようです。


さて、昔のことはわかりました。今、使いやすくないといけません。
無垢の木で作るとなると、36センチ幅を取れる木と言ったらとても大きい大木。
それに、現代のキッチンで36センチ角のお盆を何枚も並べて配膳してから運ぶ、収納する、
なかなか大きな寸法です。
先に卓上に並べて、お膳として使うには、大きいほうがせせこましくなくていいですね。

でも、各人が食後の食器をまとめて運べたら助かるなあ、、、。


選ぶときは、気持ちよく家事ができるようになる「現状の改善したいポイント」を思い出してください。
 一番優先したいのはこれ!はなんでしょうか。

・お盆に載せて食前、食後、運びたい?
 いつもよく使う食器の組み合わせが載るか?
 「湯呑み茶碗は食後運んだあとも残すからお盆にのらなくてもいいか」
 など、買う予定のお盆の寸法の紙の上に載せてみると使い勝手がよくわかります。
 台所でお盆を何枚も並べる場所を確保するのは意外と大変です。
 「それでも、2枚は並べたい」「自分一人用のランチのときはお盆で運びたい」など。
 

・お膳、お敷として食卓にまず並べて、ご飯、汁椀、銘々皿と箸置きと箸、醤油皿を並べ、
 おかずは中央の大皿にというスタイルが多い?
 
・さっと出せてさっとしまえる場所といったらここかな、、、
 そこにおける寸法はどれくらいでしょうか。


つくり手として、の前に、使い手として、料理を作る側として、片付ける側として、
あれこれ考えた結果、いくつかの寸法のお盆を作りました。

朝倉木工では、しっかり乾燥し安定した木材をまずお盆のサイズより少し大きく荒木取りして、
さらに木を動かすだけ動かしてから本製材(使う寸法)にする
「シーズニング」という工程を大切に行っています。少しづつ少しづつの工夫で
木は反るもの、といいつつも、最小限にする工夫をたくさん施しています。
無垢の木のお盆を選ぶときは、見た目にはわからないそういった部分が大切なのです。

家具作りで木の動きについては経験豊富なつくり手がひとつひとつ制作しています。


●360×240 幅は昔から親しまれている寸法で、奥行きを現代にも使いやすい寸法にしました。
 和食器が多い方には使いやすい寸法です。


●330ミリ角。なるべく360に近づけました。
 360より一回り小ぶりにしたことで
 現代の奥行き650㍉ほどのキッチンに奥に並べて、手前にワークスペースも確保できる寸法に。


●300㍉角。330と300は同じぐらいの数作ったけれどなぜかこの300のほうが人気で、あと僅かになっています。
 食事も軽食もおやつも使える手軽な大きさ。
 奥行き650のキッチンにぎりぎり4枚並べて配膳できる寸法。
 食器棚に納まるかしら、どこに置こうかしらと考える方にも選ばれています。

●480×330㍉ 品数やお皿の数が多い方に選ばれています。
 このサイズ感は、
 昔の木造建築の旅館の廊下の幅でお膳を持ったまますれ違う、という場面に使うというイメージから、
 現代のモダンな空間の、ソファー、リビングダイニング、ゆったりした寸法イメージに
 暮らしや身体尺感覚が変わってきている一つの現われのように思います。

●340×210㍉
●320×200㍉ 
●240㍉角
 これらは、軽食、ワンプレートランチ、おやつタイム、のための寸法になってきます。
 デスクに置いて使う予定でしたら、パソコンと書類の寸法を邪魔しない手頃な大きさで、
 コーヒーがこぼれても安心で、、裁縫道具をまとめたり、ペンや文具をまとめたり、
 パーソナルな空間をイメージしています。


木がある、という時点で、きれいな空気と水と土が数十年前に存在した証。
一年一年、一つところで年輪を刻んで木は生きてきました。
そしてたくさんの林業の人や製材所の木目を見る人、材木市の人、つくり手の手を経て、
使い手の今、を活かし、「ああ木っていいな、森大事にしたいな」と
プラスチック消費社会に、木を想う世代を少しでも増やしていくこと。

派手さはない、普通の「きちんとつくった木のお盆」です。
軽さも意識しました。
でも、ギュッ!と詰まっています。
一食一食が明日へつながるように、
今の時代から次の時代へ、愛用していただけましたら幸いです。


長文お付き合いありがとうございました。
今日も一日、お元気にお過ごしください。

京都炭山朝倉木工 
https://asakuramokkou.com/